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支援事業

名古屋大学・岐阜大学が連携した実習型工学教育の挑戦

1. 申請代表者名

原 進(大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻・教授)

2. 事業の期間または行事等の開催日

令和3年4月1日〜令和4年3月31日

3. 支援を受けようとする活動の概要

申請者は平成29年度に実施された本学工学部改組に伴う新しいカリキュラムで登場した新規必修実習型教育として「設計製図第3(飛行ロボットテーマ)」の立案と実施を担当してきた.本テーマは,ピッチングとヨーイングのアクティブ制御が可能な滑空機(グライダー)模型(図1)を半期の授業期間に少人数チームでゼロから製作して飛行させる内容であり,座学で学ぶ材料力学,流体力学,機械力学,制御工学など機械・航空工学の基礎理論を融合させて質の高いものづくりを学ぶ授業である(図2).この取り組みについては終了時の授業アンケートで7割の学生が来年度も必修科目として同内容を継続すべきと回答するなど大変好評である他[1],一昨年11月開催の国際会議The 6th International Conference on Mechatronics and Mechanical Engineering (ICMME 2019)においてBest Presentation Awardを獲得するなど高い評価を得ている.

一方,岐阜大学工学部川添博光特任教授,伊藤和晃准教授らが申請者からのノウハウを受けて同様の授業「自律滑空機の設計製作実習」を令和2年度から岐阜大学で開始した,この岐大の授業も好評であり,NHKや中日新聞[2]から飛行競技会の様子が報道されている.東海国立大学機構(以下,東海機構)発足前から川添特任教授,伊藤准教授らとの親交があったものの,これまで具体的な教育コラボレーションは行ったことが無く,東海機構発足を契機として,両校が連携した実習型工学教育への挑戦に取り組むことになった.具体的には,名大・岐大各校の優秀な飛行ロボット作品を集めて連携競技会「東海クライマックスシリーズ」の開催を計画している.両校優秀機体による競技会という形態を取ることで,競技結果のフィードバックを含めて,両校学生の機械・航空工学やものづくりに対するモチベーションを引き上げる他,各校ごとの授業の特徴(長所・短所)を明確にしてそれぞれの授業改善につなげることで,東海地区全体のものづくり人材育成力の向上に資するものと期待できる.このような取り組みこそが,東海機構発足による特色ある教育効果の一つになると確信する.

並行して,単なる特定日の競技会に限らず,定常的に行われる学生実験においても,名大と岐大を結び,離れていても両校の学生が一緒に実験を行っている感覚が得られるようなシステムの導入にも挑戦する.現在検討しているのは両校機械系学科3年生程度の振動工学と制御工学に関する実験テーマであり.同一実験装置を名大と岐大の各会場に設置すると同時にインターネットで結び,両校学生に同一応答を提示したり,片方が提案する設定をもう一方にデモンストレーションできる実験システムを目指している(図3).この際,両校の装置設置状況の違いやインターネットの遅れなどに伴う不確かさの影響については,階層化最適制御と呼ばれる新しい制御技術を導入して抑制するとともに全体管理は1台のコンピュータで制御し,あたかも両校の学生が一緒に同時に一つの実験に取り組んでいるような環境を安全に実現する.

これまで,東海機構発足後,両校をインターネットで結んだ講義形式の授業というのは見られたが,実習型教育の同時開催はまだ実現できていない.申請者らの導入するシステムの実現により,東海機構が有する教育ポテンシャルの幅を大きく拡げることができる.さらに,東海機構に限らず,このような離れた場所どうしで同時に同一の実習型教育を受けられるシステムの確立はコロナ禍で従来のような実施が難しくなった実習型教育にニューノーマルな方法論を提供することにもつながる.

図1 名大設計製図第3の飛行ロボット

図1 名大設計製図第3の飛行ロボット

図2 名大設計製図第3の様子

図2 名大設計製図第3の様子

図3 階層化最適制御による遠隔同時実験

図3 階層化最適制御による遠隔同時実験

4. 全学同窓会の理念との関連

名大・岐大両校のものづくりに関わる人材育成に資する取り組みとして,この支援事業は全学同窓会設立の理念2)にある「中部地域の基幹的総合大学として,名古屋大学が地域社会や産業界と協力しながら進んでいでいく中で,全学同窓会はその核となる。」に即した支援事業である.同時に,新しい取り組みを伴う東海機構の機能実質化は本学においても最重要課題の一つであり,理念3)にある「全学的見地から,学術研究,教育および学生の支援を行い,(途中略)名古屋大学の声価を高め優秀な人材を集めるように大学と連携協力する。」に即している.以上,この支援事業は全学同窓会の理念と深く結びついている.

参考文献

[1] Susumu HARA, Flying Robot Production Program for Comprehensive Understanding of Mechanical and Aerospace Engineering, Proceedings of the 2020 IEEE International Conference on Teaching, Assessment and Learning for Engineering (TALE 2020), pp. 160-163 (2020-12).

[2] 「自律滑空機、作って飛ばす 岐阜大で名大連携授業」中日新聞岐阜版2020年12月23日.(上記のWEB版記事を下記に掲載する.)

図4

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