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支援事業

動翼を用いたハイブリットロケットのロールおよびピッチ制御の実証実験
自作エンジンでの燃焼試験の実施と推力履歴の測定

1. 申請代表者名

前田 賢三 (工学部 機械・航空宇宙工科2年 名古屋大学宇宙開発チームNAFT)

2. 事業の期間または行事等の開催日

ハイブリットロケット打ち上げ:令和6年8月
 ロール・ピッチ制御開発期間:令和6年4月から8月まで
 エンジン開発期間:令和6年4月から令和7年3月まで

3. 支援を受けようとする活動の概要

名古屋大学宇宙開発チームNAFTは「Link Space ~宇宙を身近に~」をモットーに,メンバーが宇宙開発に対して全力で楽しみ,かつその魅力を発信することを目標としている.現在,プロジェクトとして,ハイブリットロケットを中心にスペースバルーンやCanSat,火星ローバーの開発を行い,社会貢献活動なども通じて文系理系融合の総合力を養うことのできるコミュニティを作ることを目的としている.
その中でも本テーマとなるハイブリットロケットの開発には,機体の構造設計や電装部品の設計,プログラミング,軌道シミュレーション,エンジンの燃焼試験など様々な分野が相互に絡み合って開発が行われる.メンバーそれぞれが自身の興味ある分野で強みを生かし,他の分野の人とも深く交流を行うことで自身の工学的な総合力を向上させるとともに,1つのチームとして1つの目標に向かうために必要なマネジメント能力やリーダシップを養うことができる.また,打ち上げ時には市役所や海上保安庁への許可申請,航空法や電波法などの法律への理解が必要となる.社会貢献活動としても小中学生を対象とした宇宙教育活動や宇宙関係のイベントへ積極的に参加することにより,様々な世代に情報発信や人的交流の機会を増やすことにつなげている.このようにNAFTは複合的な視点から,様々な学部の学生の交流の場を提供でき,優秀な人材を育成することができると期待される.
 NAFTは今までに複数回打ち上げを行っており,直近では2023年8月に約3年ぶりの打ち上げに成功した.上の写真1,2は当時の写真である.打ち上げまでに期間が開いてしまった理由はコロナウイルスなどにより,打ち上げ実験が中止されたためである.この打ち上げでは全長約2 m,重量約5 kgのロケットを打ち上げ,高度約1 kmまで到達したのち,パラシュートの放出および開傘を行い,無事に機体を回収することができた.打ち上げを行えなかった期間に失われかけていたロケットの開発技術を実証できた価値ある機会であった.これを弾みにNAFTはさらなる技術の進歩とより高度なミッションへの挑戦として,現在チーム一丸となって以下の2つの事業の成功に向けて活動している.
まずは動翼を用いたハイブリットロケットのロールおよびピッチ制御である.ロールとは機体の進行方向を軸とした回転であり,ピッチとは進行方向と直行した方向を軸とした回転である.このミッションは,機体の安定性を確保するために機体後方に搭載する翼とは別に,機体中央付近に回転可能な翼を搭載し,その回転角を変えることで機体の飛翔中の姿勢を制御しようとするものである.現在,2024年3月の打ち上げを目指して,機体のロールのみの制御をミッションとして機体を開発中である.我々はこの打ち上げから得られた経験をもとにピッチの制御も来年度から実装することを目指している.これには新たな機構の開発や,高度な空力解析,制御プログラムの構築が必要となり,大きな資金調達が必須となる.特に,動翼を支えるモータは小型でかつ高トルクなものが望ましいが,とても高価である.
 次にNAFTのミッションとして掲げていることが自作エンジンでの燃焼試験の実施と推力履歴の測定である.現在,NAFTが打ち上げに使用しているエンジンは既製品であり,打ち上げごとに購入している.しかし,その販売先の都合によりエンジンの調達が将来,困難になると危惧されている.そのような中,NAFTが継続的なハイブリットロケットの打ち上げを目指すには自作エンジンを開発することが必要と考え,このプロジェクトは2023年10月から始動した.さらに自作エンジンの開発は未だ学生団体の間では例が少ないため,貴重な知識や経験を得ることができ,今後より高高度、高速度を達成し発展的な工学的実験や理学的観測を行うことができると期待される.今回のミッションは2024年度中に自作エンジンを用いて燃焼試験を行い,その推力履歴を測定することを目標とする.現状,エンジンの設計は進んではいるものの,安全で適切な推力を得られるものを開発するにはハイブリットエンジンの燃焼特性を理論的に理解する必要があり,学ぶべきことは多岐にわたる.そして,何よりもエンジン開発には,材料や燃料などに莫大なコストがかかると予想される.しかし,NAFTはチーム一丸となってこの計画に真剣に向き合い,将来自作エンジンを用いて打ち上げができることを目指している.この実現のためには名古屋大学全学同窓会のご支援をぜひともお願いしたいと考える.

4. 全学同窓会の理念との関連

前述のとおり,NAFTは複数の分野を融合し,その中で多くの学生が交流する機会が与えられると期待される.これは全学同窓会の設立理念にある「全学的な見地にたって,部局同窓会と連携しながら卒業生,学生,教職員の交流の場を提供する.」に即した内容であり,将来全学的な総合力を必要とされる人材の育成に大きく貢献すると考える.また,新たなるミッションを今後,達成していくためには,他大学の同様な分野で活躍する方々との技術交流が不可欠であり,大学を超えたつながりを持つことは非常に重要である.実際,自作エンジンの開発では他大学の学生・教員のノウハウもお借りしながら活動する予定である.また,NAFTで得られた知見は年数回開催されるシンポジウムにて全国のロケット開発に携わる学生団体に共有するなど,アウトプットにも積極的に取り組む予定である.全学同窓会のご支援のもと活動が充足し,学外との交流が盛んになることは「名古屋大学全体の情報発信や人的交流において,全学同窓会は中心的な役割を果たし,名古屋大学が社会に開かれた大学になるように大学と連携協力する.」という理念と一致すると考える.以上から,NAFTの活動は全学同窓会の理念と深く結びついている.

写真1 打ち上げ時

写真1 打ち上げ時

写真2 回収後の機体

写真2 回収後の機体

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