学生とともにつくる大学博物館〜博物館20周年〜
1. 申請代表者名
梅村 綾子(博物館・研究員)
2. 事業の期間または行事等の開催日
2020年4月1日〜9月30日
3. 支援を受けようとする活動の概要
■背景
2020年は、名古屋大学博物館の創立から20周年という節目の年である。これを機に、我々が掲げる「未来に活かす博物館」構想を全うするためにも、名古屋大学博物館を「学生とともに」築き上げていくことを一つのテーマとしている。
その背景となるのは、本学に大学博物館があるにも関わらず、本学の学生からの「名大博物館なんか知らない／興味ない」という声である。世間一般に言われる「若者の博物館離れ」にも通ずるところがあるかもしれないが、我々大学博物館はこれぞ課題として向き合い、真に「活かせる博物館」とはなにか、そのためにはどうすれば良いか、考え行動に移すときとして取り組んでいる。
■大学博物館の特徴を生かした教育普及活動の展開
我々大学博物館は、大学での高等教育や研究活動のほか、展示およびアウトリーチ活動により大学と地域社会とをつなぐ活動を遂行する。特に後者においては、社会への巣立ちを目前にした学生らに挑戦の機会や場を提供することができるはずと考え、我々が展開する地域社会貢献活動の一つに、本課題の解決の糸口となることを目的としたアウトリーチ活動の導入を試みた。
学生スタッフの募集は、当初、草の根的に人的ネットワークの伝手を頼りに勧誘することから始めたが、2019年7月に名古屋大学博物館のLINE専用アカウントを開設し、学生らの意欲において主体性を促すこととした。つまり、学生らはこのアカウントに主体的に“友だち登録”をすれば、博物館の活動運営スタッフ募集についての情報が得られ、興味があれば博物館の企画運営に申し込めるという仕組みを構築した。これまでに名古屋大学、名古屋工業大学、南山大学の大学生・大学院生68名の登録がある（2020年2月現在）。
我々博物館が、学生らの自主的な企画提案に対しその運営の指揮をとったイベントとしては、2018年11月〜2019年3月の「歩いて楽しむ キャンパスミュージアム（シリーズ全5回）」を皮切りに、2019年8月には「名大生による 夏休み子ども研究アドバイス会」、2019年9月には「出張！名大博物館（場所：イオン ナゴヤドーム前店）」などを開催した。いずれの企画も、参加者および学生の両方から「大変良い学びの機会となった」と喜びの声を頂いている。
■本事業で目指すこと
本事業において、名古屋大学博物館は、学生らの自発的な社会貢献活動をサポートする運営母体となり、学生らとともに企画運営組織の基盤を構築していく。そうすることで、たとえ有志の学生らが卒業等で大学を離れても、代々の引き継ぎを途絶えることなく事業を発展させていくことができると考える。
2019年度は、学生を招集する一手段を構築したのみであるが、これまでの活動から、少なからず学生らが博物館の企画運営に関与したいと興味を示していることが分かった。引き続き、本取り組みが、学生らが社会に出る際の自己アピールの要素となれるよう、また社会の即戦力となれるよう、本運営組織の体制を整えていく。
2020年度（特に上半期）は、博物館の運営資金獲得をテーマとし、何をどのように進めるかについて検討するワーキンググループを新規に設立し、学生運営スタッフとともに考えていく。その背景として、全国8割以上の博物館および博物館相当施設が「財政面で厳しい状況にある」という課題に直面しているが、名古屋大学博物館も例外ではないことを挙げ、将来を担っていく学生らはこれをどう捉えるか、学生らの意見やアイデアをもとに課題解決を視野に入れた活動（主にイベント企画として）を実践により展開していく。ただ、このような新規事業を始めることは現行予算では厳しく、本事業の立ち上げに向け、全学同窓会のご支援・ご協力を是非ともお願いしたい。
4. 全学同窓会の理念との関連
本取り組みにおける「学生」とは、名古屋大学およびその周辺大学の大学生・大学院生を指す。そのため、大学を問わず、ましてや学部や専攻を問うこともなく、「やる気」で集まった学生らの人事交流も自然と盛んとなっている。また今年度、学生メンバーの一部は大学を卒業するが、卒業生として博物館および後輩たちを応援したいとの声もいただいている。したがって、本取り組みは、全学同窓会の理念に沿い、基幹的総合大学である名古屋大学にある博物館が地域社会貢献活動を担う中で、専門分野を越えた情報交流のもと、社会に求められる真の人材を育成していくことができる事業であると位置付けている。